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『車輪の下』

2009.05.17 - 外国文学
車輪の下 (新潮文庫)
車輪の下 (新潮文庫) 高橋 健二

新潮社 1951-11
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それがヘッセの本に限ったものではないのかもしれないが、一昔前までの文学には、病弱な主人公と彼が憧れる少年との友情関係を通じた自己の存在への問いという構図が多く見て取れるような気がする。三島由紀夫の『仮面の告白』でも同様の人間関係が展開されており、そうした他者からの影響を受けた結果の自己成長についての考察が、一種の定型として確立されていたのかもしれない。文学者の方の意見を聞いてみたい。

 

主人公のハンスは州試験を受験して神学校に入る、いわばエリートである。幼少から勉学ができたため、周りから担ぎ上げられて闇雲に(ハンス自身は勉学を楽しんでもいたので、あながち闇雲ではないかもしれないが・・・)勉強し、念願の神学校に入学するも、次第に神経衰弱に陥り、ついには退学してしまう。その後の彼の人生は言うまでもないが、何とも私自身の経験に重なるところのある話である。幼少から勉学ばかりに励み、「最も感じやすい、最も危険な子供時代」に、夜遅くまで勉強をしていたハンス。その反動は彼の身を焼いた。彼が神経衰弱に陥ってからも、周りの大人達はただただ憤慨するばかりで、誰も「彼」自身を理解しようとしない。

 

私自身、彼ほど勉強に励んでいたわけではないが、中学受験を親から進められ、そのために塾に通って勉学に励む毎日だった。その結果、念願()の学校に入ることはできたが、その反動は中学時代に訪れ、何度も退学になりかけたことがある。思えば、私の場合はまだ仲間や先生方に恵まれたため、そのような時代を乗り切ることができたが、そうではない人もたくさんいると思う。そのような人達はどうなってしまうのか。ハンスのように車輪の下に押しつぶされる運命を歩むのではないか。

 

「どうもわからん」「あの子はあんなによくできていたし、何もかも、学校も、試験もうまくいったのに」と、ある人は言う。

 

「あんたもわたしも、あの子にはいろいろなすべきことを怠っていたんだ。そうは思いませんかね」と、ある人は言う。

 

困難を乗り越えることのできるたくましい子供もいるかもしれないが、そうではない子供だっているのだ。一辺倒に教育を押し付けるような育て方ではなく、個人の資質に合わせた教育が必要だと思う。しかし、学歴主義が未だ根強い日本においては、それも難しいのが現状だ。やはりそうした個を生かす教育というのは、先生方の個別の気遣いによるところが大きいのだろう。本当に大変な仕事だ。
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 プロフィール 
HN:
yd0g
年齢:
37
性別:
男性
誕生日:
1987/02/03
職業:
学生
趣味:
音楽
自己紹介:
世界の平和を目指す一地球人。言うまでもなく甘党です。好物は明治のミルクチョコレート。"simple is the best."ですね。

もともとはコートジボワールでの滞在録でしたが、5月から一日一冊読書することに決めたので、その感想を徒然書いていこうと思います。
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